常栄寺庭園(じょうえいじていえん)
- 【所在地】
- 山口県山口市宮野下2001-1
- 【開園面積】
- 42,888㎡
- 【入園料金】
- 大人300 円、中高生200円、小学生以下 無料
- 【公開時期】
- 通年(年中無休)
- 【施設管理者】
- 宗教法人常栄寺(民間)
雪舟の水墨画の世界を具現化した名園
常栄寺庭園は、15世紀後半(室町時代中期)、守護大名・大内政弘が雪舟に命じて作庭させたとの伝承が残る庭園です。
『庭園の構想意匠が佳く、風韻に富む立石の手法に於いて特殊なるものあり、多少の改築の跡があるものの、大部分は善くを存し、稀にみる名園として保存の必要あるを認む』として、 大正15年(1926)2月24日に国の史跡及び名勝に指定されています。
質的に日本庭園随一と評される滝石組
見どころ満載とも言われるこの庭園の最大のハイライトは、庭園北東奥の山畔に築かれた滝石組です。室町時代の庭園を代表するともいわれるこの滝には、勇壮な段落ちの滝石が組まれ (龍門瀑)、大滝の 下の池には「 鯉魚石(りぎょせき)」と呼ばれる立石が配され、「登竜門伝説」を元に、まさにこれから滝(龍門)を登って龍になろうとする鯉の姿が表現されています。この滝石組を遠景とし、滝石組の前に配置した池泉を中景、池泉の手前には、近景として枯山水の石組が配され、これらの景観に表現された遠近法は、雪舟の絵画作品にみられる遠近法との類似性が指摘されています。
蓬莱思想を主題とした大池
庭園の中央に位置する池泉には、鶴島、亀島、船石が組まれています。軽快な構成で庭の景色に溶け込むような自然風の意匠の鶴島、亀島に対し、船石は具象的な形がとられています。これは、この庭園の主題が、施主一族の繁栄であり、あたかも鶴島を迂回して蓬莱に向かおうとしている船をイメージして、象徴的に据えられているとも言われています。
また、池と本堂の間の平庭部分には、景石がまとまって組まれており、枯山水の庭と言われています。これらの景石は、雪舟が中国大陸の風景から得たと伝えられる“三山五嶽”をなぞらえたものであるとも評されています。
直線と角との最大巨匠である雪舟
明治中期、日本古美術の再発見と近代日本画の開拓に貢献したアメリカ人・フェノロサは、雪舟のことを「雪舟は世界の芸術界においての、直線と角との最大巨匠である」と評しています。この評は、雪舟の山水画に対してのものではあるのですが、水と石に主体を置いて、特に岩の持つ硬さ・頑丈さをよく生かして構成されたこの庭園も、その評価に相応しいものと言えます。
常栄寺と重森三玲の名園・南溟庭(なんめいてい)
室町時代、現在の常栄寺の地は、妙喜寺の寺地でした。妙喜寺は、雪舟のパトロンであった大内政弘の母(大内教弘夫人)の菩提寺であり、大内政弘が雪舟に命じ、この庭園を築かせたと伝えられています。
年間の入場者数は4 万人(平成 30 年 1 月~12 月)。秋季や冬季には、 2 日間程度の夜間開園(ライトアップイベント)が行われています。
また、指定地内には、昭和43年に作庭家・重森三玲によって作庭された 南溟庭(なんめいてい)もあり、時代の異なる名園を楽しむことができます。
計画のテーマでの位置づけ
雪舟作庭伝承の残る文化財庭園。国指定史跡及び名勝。雪舟が山口に滞在していた際に、守護大名大内氏によって作庭を命じられたものと伝わっています。